私がこの言葉を初めて知ったのは
今から9年ほど前になる。
私が交際していた人の暴言や
バカにされることに耐えかねて
別れた直後だった。
ある友人にその別れの話をしたら
その人はDV家庭で育ったために
私よりずっと早く子供を見える暴力見えない暴力で
支配する親がいることに気づいていたので
「それって、モラハラじゃない?」と
教えてくれたのだった。
なんだそれ?と思って
ネットで調べたり本を読んだりして
残念ながら自分が彼氏にモラハラをされていたことを
確信した。
だけどその人のモラハラは、わかりやすかった。
「お前より俺の方がすごいからな!」と
いろんな方面でバカにしたり
使用中にパソコンの線を抜いたり
わざとタンスの引き出しを全部少し引き出して
「お前片付けできねえの?」とか言ってみたり
幼稚な悪意が丸見えだったので
そしてそれは気を引きたいためにやっていることが
純粋で単純な私にさえも丸分かりだったので
なんだこの人?
とすぐにおかしさに気づいた。
彼は99点とったら1点間違えたことを
叱られるような完璧主義の親に育てられたと
言っていた。
母親は朝ごはんは9品くらい用意していたと。
だから自分は彼女に完璧を求めてしまう、
そして振られるんだ、と自分で分析もしていた。
だけどわかっちゃいるけどやめれらない状態で
一緒にいると奴隷のような気分になってくるので
私も自分が自分じゃなくなる前に別れなくちゃ、と
1年半の交際にけりを付けたのだった。
そして当時は全然気づいていなかったのだけど
その前に付き合っていた人、その人が私の人生で
最初のモラハラ彼氏だったと思う。
彼は32歳で私が初めての彼女という
アニメオタクだった。
変わった人ではあったけれど
私に対して一生懸命なことがビシビシ伝わって
きたので、私は交際を受け入れた。
だけど同棲をし始めてすぐに彼は
横暴な人になった。
日用品や食品は底値で買うように
指示された。
引っ越し当初、ハンドソープを買って帰ったら
石鹸の方が安いだろう!こんな贅沢するな!と
怒られた。
私も働いていて、彼も派遣社員だったので
同じくらいの給料、家賃や生活費は折半だったのに
こんな風に言われた。
たまに彼がパスタを作ると
できたよ〜の声ですぐにテーブルにつかないと
ブチ切れられた。
他のことをしていて秒でいけなかったら
「パスタは時間が命なんだよ!
すこしでも遅くなったら不味くなるから!!」と
尋常ない剣幕でキレられた。
彼は私と同じ派遣社員だったのに
私にお金の教育、人生の教育をするのが好きだった。
自分はもうすぐ成功者になってセミリタイヤするから
夫人の心得を今から勉強しておくように、と
いろんな自己啓発本を渡された。
でも彼は誕生日を迎えても
やっぱり月給20万円の派遣社員のままだった。
喧嘩するとすぐに死ぬと脅した。
階段から転げ落ちて見せたり
自分はキリストが死んだ日に死ぬことになってるから
あとすこしだね、とか言ったり。
通販で買った家具のネジが一個足りないと
クレームの電話をかける。
私が1人で家にいるときは誰が来ても
子供のふりして出ないようにと指示されていた。
あまりにキレやすく、神経質で
私に対しても横暴になったので
私は同棲3ヶ月で別れを決断した。
その人は、父親がDVで、幼い頃に離婚。
スーパーで働く母1人に育てられていた。
父親はとっくに再婚して
2人の子を作り、海外で優雅に暮らしていると
言っていた。
父親がいた頃はいつ刺されるかわからないと
背中が常に緊張していたと言っていた。
30過ぎても、ずっと父親を激しく憎んでいた。
経営者の父に認めてもらいたくて
彼は自分も成功者になろうともがいていたんだと思う。
だけど、インナーチャイルドの傷が深過ぎて
彼の大人になってからの人生はどうにも
うまくいかないのだった。
当時は知らなかったけれど
この人が私にしていたことは
完全なモラルハラスメントだ。
結婚しなくて、本当によかった。
私は30歳くらいから付き合う人が
なぜかこんな感じのモラハラ野郎ばかりに
なった。
後から思えば一番健全で一番純粋に私を
愛してくれていた彼氏を
「物足りない」などとこっぴどく傷つけて
振った私への、罰なのかと思ったこともある。
でも全ては、私の愛情の土台になっている
親からモラルハラスメントを受けていたことが
原因だった。
身体的暴力とは違って
精神的DVのモラハラは「善意」「常識」「美徳」などの
仮面を被っているので被害者本人もなかなか気づかない。
やっている加害者本人さえも、本気で
それが愛だとか善意だとか思っているのだから
被害者も、まして周囲は誰も気づかない。
恋人や夫のように他人の場合は
比較対象があるので気付きやすいけれど
親子間のモラハラに気づくのは至難の技である。
子にとっては、親は掛け替えのない唯一無二の存在。
親は子供を愛しているものだという大前提がある。
子は命に換えても親の愛を疑うことはできない。
未成年の子供は他の親はどうだろう?とか
知ることができない。
自分の親のおかしさに気づくのは
大概自分が結婚して家庭をもち、
相手の親やよその家庭を知ってからである。
私は、40になって自分が親になって
離婚という痛すぎる経験を経てようやく
親にモラハラをされていることに気づいた。
マスターヒーラーDr.小林健も言っている。
親の愛だと思っているものが
実は「我が子をわかる範囲に置いておきたい」という
単なるエゴであることに親は気づかなければならない。
「我が子をわかる範囲に置いておきたい」
母の私に対する言動の底にあるものは
この一言でまとめられると思った。
母は娘の私が自分を超えることを許さない。
わからない所に行くことを絶対に許さない。
モラハラをする人は、常に自分が優位に立っていなければ
気が済まないので、
ターゲットの相手より自分の方が博識である。
よく知っている。賢い。知恵がある。
経済力がある。良識がある。交際関係が豊かである。
力がある。幸せである。
こう思うことが何よりも最優先に大事なのである。
これが脅かされる事態になれば
子供の幸せや努力など正直どうなってもいいのだ。
だから知ったかぶりをする。
些細なことをバカにして優位に立とうとする。
褒めない。
褒めるときはバカにした褒め方しかできない。
(人ならわかって当たり前のことを
「すごいね〜わかったの〜!」などと言う。
相手が自分より稼ぐことを許さない。
お金を恵んであげる立場でいようとする。
相手の交際関係を把握し、切れるように工作する。
(自分しかいない、と思わせることが目的)
相手の味方であると判断した人物に悪口を吹聴したり
自分の方が被害者だと訴えたり
互いに実は悪口を言っていたよなどと嘘を言って
絶縁に持っていく。
周囲を自分の味方にして四面楚歌にする。
相手の仕事は認めない。
仕事しても認めない。しなくても認めない。
モラハラの大きな特徴は
加害者の工作通りのことでない限り
被害者が何をしてもしなくても気に入らない、
という点だ。
金持ちになっても気に入らない。
貧乏なら馬鹿にする。
いい相手と結婚することは認めない。
離婚したら馬鹿にする。
してもしなくても
頑張っても頑張らなくても
気に入らない。
なぜなら相手がどうであるとかは
問題ではなく
自分が優位にたつことだけが目的だから。
加害者は常に誰かをいじめていないと
生きていられない。
こんな関係を「愛」だと信じ込まされて
生きてきたから、大人になって他人と
愛情関係を構築するとき
親と同じような人をわざわざ選んでしまうのである。
それこそが「愛」だと疑わなかったから。
愛し愛されれば傷つくのは当たり前なんだと。
それにモラハラ加害者は獲物を見つける
嗅覚が発達しているので、自分が被害者体質だと
気づいていない人を見つけるのがうまい。
だけど、本当に健康な愛情関係は
わざわざ傷つけあったりしないらしい。
互いを一人前の独立した人間として
尊重し、支え合える関係というのが
この世にも存在するらしい。
この本の加藤先生もおっしゃている。
モラルハラスメントをされていると気づいたら
相手が親だろうが兄弟だろうが夫だろうが
何が何でも逃げる。離れる。縁を切る。
それしかあなたが自分を取り戻す道はない。