子の心親知らず

実の母親に家庭を壊された毒親育ちのシングルマザーが親子のあり方を考察するブログ。

里帰り出産の理想と現実~父の介入~

母が泣いて、激しい言い合いになった日の翌日は土曜で、
私達夫婦は、最後に父にラーメンを食べに連れて行ってもらうことに
していた。

その日の朝、母は私に、

「昨日のこと、お父さんにちょっと言ったんや。そしたら確かに
おまえの顔怖いで。あんまり笑顔がないな。って言われたわ。
姉ちゃんにお母さん笑顔がないって言われても自覚なかったけど
そうやったんかもね。」

と母は笑っていた。

そして私達は、予定通り父と食事に行った。

母は、麺を食べないので、娘の子守りになった。

父は行くときも、お店の中でも、ほとんど話さなかった。

もともと口数の少ない人なので、まあ普段よりは空気が重いけど
私達がしてきたことを思えば仕方ないな、と思っていた。

帰り道、父が重い口を開いた。

「あのな、リリアナ。お母さんはおまえのためを思って一生懸命やっとる
んや言うことは、わかるやろ。なんやケンカしたって話母さんから
聞いたけどな、母さんおまえのためを思ってるだけなんやぞ。
何も憎くてどうの、やないことだけは、分かってあげな。」

「一生懸命すぎて嫌なんやんか!やってほしいんじゃなくて
やってほしくないって言ってるのに!」

うん?

父は、理解できないようだった。

「お父さんまで私だけが悪いって責めるん!
お父さん今まで子育てはお母さんに任せて何も知らんやんか。
私とお母さんの間に何があったか、10代の頃からどんなやり取り
してきたんか、何も知らんやんか!
お母さんそういうの全部お父さんには隠してきたしな。
それやのに急にそんな私だけが一方的に悪いみたいに・・・」


とても、悲しかった。

”喧嘩両成敗”なのに、言い合いになった話を母からだけ聞いて、
私には何も聞かずに、いきなり私を戒めるようなことを言ってきた
父に、心の底から、がっかりした。

ケンカしたという話を片方から聞いたら、
必ずもう片方にも、ケンカになったいきさつや理由、思いを
聞かなければいけないと思う。

誰だって、自分が一方的に被害者だと主張するのだから。

両方からきちんと話を聞かないと、正しい仲裁なんてできない。

父が、そんな単純なことも分からずに
母の肩を持ったことは、ただでさえ母との言い合いで
ぼろ雑巾のようになっていた私のしなしなの心から
最後の水分を、奪った。

車中でそういう話になり、家に着いた時には
私の目からは、最後の水分が、ポロポロと流れていた。

リビングのドアを開けると、母が赤ちゃんの横にいて
笑っていたけど、私の泣き顔をみて、真顔になった。

私は、両親にむかって
「お父さんもお母さんも子供の気持ち何にも分かってない!」
と言った。

父は
「そりゃ分からんわ。」
と言った。

どういうことか。

親なのに、子供の気持ちを分からん、で済ませるなんて。

そりゃあ何の努力もしないで簡単に人の気持ちなんて
分からないだろう。

性別も、世代も違う娘の気持ちなど、懸命に分かろうと
努力しなければ、たくさん話を聞かなければ、
勉強しなければ、絶対に分からない。

こういう父だったのだ。

だから母は、隠してきたのだ。

お父さんに言うと、解決するどころか、余計傷つくことになる。
面倒なことになる。

母にはそれが分かっていたから、
都合の悪いことは、父には言わずにやってきた。

父は、差別的なところがあるし、女心を分かろうと努力することもない。
年頃の娘に、親戚一同の前で、脚太いな~!とか言うような
デリカシーのない父なのだ。

母がなぜ、娘とのケンカや私と妹の摂食障害のことなどを
父に隠してきたのか。
私が結婚するとき、夫が精神疾患を持っていることを
しばらく言わないでおこう、と言ったのか。

父は、自分の理解を超えているものを、
無下に一蹴してしまうからだ。

宇宙人だとか、動物と話せる人間だとか、気功だとか
精神疾患も、父には、”存在するはずのない、得体の
知れないもの”

父には、理解を超えているものに歩み寄ろうとする姿勢は、ない。

私は、よく分かっていなかった。

父のこういう性格で、家族間の争いを全部話したら
どういう結果になるのか。

母が、父を人として信頼していないから話さないのだ。
母は、父にうまく子育てできていないと責められるのが
耐えられないから、表面を取り繕っているのだ。
自分を守りたいから、父に言わないのだ。
ずっと、そう思っていた。

母は、ずるいと思っていた。

だから今回のケンカになる前に母に言ったことがある。

お父さんに私とのケンカのことも相談してたら
違う結果になったかもしれへんやん。

・・・・・確かに、違う結果になった。

しかしそれは、私の想像とは逆のほうに。

私は、何も分かっていなかった。

母はやはり、私よりずっと正確に、父の性格を理解していたのだ。

私はやはり、父親を健気に信頼している、ただの子供なのだった。


夫や妻と、子供が言い争いになった時
一体どちらの味方をすればいいのか。

難しいけれど、まずはどちらからも言い分をきちんと
聞いてあげるべきだと思う。

その怒りはどこから来ているのか。
相手を責めている言葉の裏に、どんな期待があるのか。


とにかく、この父の対応は、私にとって致命傷になった。

私は両親の前で、幼い子供に戻って泣きながら

「お父さんもお母さんも、子供の気持ち何にも分かってない。
子供が、親のこと責めたくて責めてると思うん?
それだけ苦しいからやんか。悲しいからやんか。
10代の頃からずっと訴えてきたのに、
もう、分かってくれへんのやな。
・・・・もうあきらめる。疲れた。

今度からこっち帰ってくるとき日帰りにするから
孫に会いたいとか淋しいとか言わないでね!
今までお世話になりました。」

そうまくしたてて、荷造りをしに行った。

明日、日本を発つ日だった。

母は、少し経ってから荷造りをしている部屋に入って来て
私に謝った。

「リリちゃん。ごめんな。お母さん、お父さんにいらんこと
言わなかったらよかったね。お母さんとケンカになったのに
お父さんにまで叱られて、かわいそうに。」

「別にいいよ。子供と配偶者がケンカになった時
配偶者の肩持つ方が夫婦仲にはいいって言うしな。
私には(夫)がおるから。お母さんはお父さんと仲良くしたらええやん。」

私は完全に、すねていた。

「お母さん、間違ってたんやね。
一生懸命やってきたつもりやったけど、リリちゃんがそういう風に
受け取ってたってことは、やり方が間違ってたんやろうね。
昨日も、大人げなくムキになってしまってごめんね。
・・・・・お母さんの子供に生まれない方がよかったって思う?」


母は、とても淋しい、重い口調で
私の背後に、語りかけていた。

この日だけではない。

里帰りしてからずっと、ずっと母は重い空気を出し続けていて
私は、もうほとんどペシャンコだった。

孫ができてお母さん、うれしいけど、さみしい。
手放したくないのに、離れて行ってしまうから、さみしい。

全身からそういうメッセージを出し続けていた。

だからこそ、私も夫も、1日も早く離れたかった。

自分たちが潰れてしまうから、私達は、自分達の新しい家族を
守るために、1日も早く、この重いおばあちゃんから、離れなければ
ならなかった。