子の心親知らず

実の母親に家庭を壊された毒親育ちのシングルマザーが親子のあり方を考察するブログ。

眠れない夫・眠りたい妻

(この記事は過去に書いたものを転載しています)

2016年11月12日

 

精神障害と不眠はセットだが、夫も統合失調症と診断された時から
睡眠薬を処方され、もう10年睡眠薬なしには眠れない体になっている。

 

夫はよほど肉体的に疲れている時以外は

なかなか長時間眠り続けることが
できないため、私と同じ時間に寝た場合、

ほぼ決まって早朝に目が覚めてしまう。

 

それが夜中の2時だったり、

3時だったり4時だったりする。

 

昼行性の人間が本来眠っているはずの

まだ暗い時間に起きてしまった夫は
同じ部屋で寝ている妻子を起こさぬようにじっとしている、

ということはできず、


起き上がってトイレに行き、水を流し、鼻をかみ、

ペットボトルを開けて水を飲み、

たばこを吸うために、ドアをガチャンと開けて出ていく。

 

そしてしばらくしたらまたドアをガチャンと開けて戻ってくる。

それから意味不明に部屋の中をうろうろ動き回る。

 

夫本人は声も出さず、そーっと静かに動いているつもりだが、
人の睡眠は浅い時深い時があり、浅い時はささいな物音や人が
枕元を動く気配で目が覚めてしまうものだ。

 

だから私は子どもが生まれる前から、

「夜中に目が覚めてしまった時は、

動かずにベッドかソファに
横たわって静かにipadでも見ていて。

それなら私も起こされずに済むから。」

と何度もお願いしてきた。

 

だけど夫は、なかなかじっとしていることができない。

 

それでも私が再三怒ったり、お願いしたり、

時には泣いて訴えたこともあり、
結婚当初よりは静かにしていてくれるようになった。

 

結婚当初は、自分が目が覚めたら

私が隣で眠っていることなどお構いなしに
テレビをつけたり!横で何かむしゃむしゃ食べたり!

ドタドタ枕元を
歩き回ったりして深夜に無駄に起こされた私は

はらわたが煮えくり返った。

 

夫には、”寝ている人間を起こしてはいけない”

という概念がそもそもなかった。

 

まだ寝ていていい明け方の4時に、

自分の物音のせいで私が目を覚ましたら
にこにこして「おはよう!」などと言ってきて、驚く。

 

「おはよう」じゃねえよ!何時だと思ってんの?
なんでこんな時間に人起こしておいて平気なの?
私3時間後に起きてそれから仕事いかなきゃいけないんだよ。
昼寝できないんだよ?

こんな睡眠不足じゃ昼間がんばれないじゃん!

何でわかんないの?

 

こんなぐったり疲れるやり取りを、

まだ暗い時間から何度繰り返してきたことだろう。

 

そもそも私はロングスリーパーで、

8時間は睡眠が必要な人間だ。

 

そして不眠とは無縁の、

何があっても”眠れない”ということがない、
無神経に起こされたりしなければ

夜中に目を覚ますこともほとんどなく、

起床予定時刻までぐっすり寝られる、

夫のような不眠の人間からすれば
なんとも羨ましい人なのだ。

 

しかも旅先でも移動の乗り物の中でも、

いつでもどこでも寝ようとすればすぐに寝られる人間なのだ。

 

そんな私にとって、

夜中に起こされることはそれこそ生死にかかわるほどの
ストレスで、耐えがたいことだった。

 

だんだん少しは静かにできるようになった夫だけれど、

それでもじーっとしていることはできず、

相変わらず私は夫が立てる物音のせいで夜中に
何度も目が覚めるという状態が続いていたが、

 

それでも子どもが生まれるまでは、
わたしは昼間仕事をしていたわけでもないので、
眠ければ朝ゆっくり寝ていることも、

好きな時に昼寝することもできたので、

さほど問題でもなくなっていた。

 

しかし子どもが生まれて、

睡眠問題は今度こそ生死に関わるレベルでまた浮上してきた。

 

赤ちゃんは3,4時間おきに目が覚め、おっぱいを求める。

 

私はそうして夜中に何度も起きる生活になったが、

今までのように好きな時に昼寝をすることもできない。

 

昼間も赤ちゃんのリズムに合わせて動き、

どうしても眠い時は赤ちゃんが
寝ている間に一緒に昼寝する時もあるが、

逆に赤ちゃんが寝ている間に
しか自分のことをできないので、

その時間を有効に使いたくて寝るより何かしてしまう。

 

常に睡眠不足の体で初めての育児に緊張もし、

抱っこや授乳で体力も使い、
急に自分の時間がなくなったことに計り知れない

ストレスを感じている中で、


夫にまで夜中に起こされることは、もう生きていけない、と
思わせるほどの大きすぎるストレスになった。

 

最初の頃は同じ部屋で寝ていた。

 

寝つきの時は夫のいびき、歯ぎしり、寝言で

私は何度も起こされ、
やっと寝かしつけた赤ちゃんがそれで目が覚めないかビクビクし、


私も娘も深い眠りに入ったかと思えば

今度は夫が起き出してドアを
開けたり物音を立てて、私はまた起こされる。

 

タイミングが悪ければ赤ちゃんも

一瞬目を覚めしてしまうこともある。

 

夫は眠剤を飲んで寝るので、自分はすぐに寝つき、

夜中赤ちゃんが泣いても全く気付かない。

 

寝かしつけるのは私だけの役目で、自分勝手な睡眠パターンの
夫にもう我慢ができなくなり、娘が生後5ヶ月になったころ、
夫には自分の部屋のソファで寝てもらうことにした。

 

夫婦別寝室。

 

赤ちゃんもだんだん長い時間寝てくれるようになり、私も少しは
まとまった睡眠がようやく取れるようになった。

 

しかし暖かな寝室を追い出された夫は、

あからさまにすねていた。

 

朝、ぐっすり寝て上機嫌な妻子とは反対に、

起きてくるなりものすごい
落ち込んだ表情をみせるようになった。

 

朝目が覚めた瞬間、ふか~い孤独を感じる、と言われた。

そして、「死にたい」と口にするようになった。

 

ただ自分と子どもの睡眠を守りたいだけなのに、
そんなことまで言われて、私の方が死にたくなった。

 

夫がさみしいのも分かっていたけれど、子育てに必死な私には、
自分と子供の睡眠を確保することが最優先したいことだった。

 

夫が同じベッドで寝ていれば、

彼が立てるいろいろな物音で夜中に
起こされること以外にも、

夜中の授乳の際に夫の足が娘にあたらぬよう、
うつらうつらした状態ながら常に神経を

張り詰めていなければならなかった。

 

だから夫がいない寝室で娘と2人で寝られることが、

私には本当に楽だった。

 

夫が、いびきも歯ぎしりも寝言もなく、

寝返りも打たずに、
夜中に目覚めることもなく、子どもが自然に目が覚める朝まで
静かに寝ていてくれるなら、喜んで一緒に寝るけれど、

そうではないから、仕方なかった。

 

私の実家にいる間は、

私と娘は客間の和室に布団を並べて寝ており、
夫は2階の元々私の部屋だったところのベッドで1人で寝ていた。

 

夫はずっと淋しかったみたいだけど、私はそれが快適だった。

 

仲直りしよう、そう思って一緒に旅行に行ったのに、

旅先のホテルでは
同じ部屋の同じベッドで寝ることになり、

また睡眠を妨害されて喧嘩になった。

 

結婚記念日にステイしたホテルでは、

深夜3時頃目が覚めた夫が携帯電話の
明かりをつけて部屋の中を30分ほどもうろうろしていた。

 

チカチカ照らされる灯とうろうろする夫の気配と音で

私も娘も目が覚めてしまい、

「何やってんの?」と聞くと「探し物」と言った。

 

彼は、外でたばこを吸う時に聞くために、ipodを探していた。

 

そしてついこの間、

子宝祈願した場所へお礼参りの旅に行った時も、
ホテルで夜中の3時半にやっぱりうろうろして、

また同じくipodを探していた。

 

その日は朝早いフライトだったために

本来なら朝4時半に起きて準備する予定にしていた。

 

それを夫がうろうろしたために1時間早い3時半に起こされた。

ただでさえ朝早く起きなければいけなくて、しかもその日は1日中
赤ちゃん連れのフライトで体力勝負なのに、

夫は私の貴重な睡眠時間を、1時間も奪った。

 

その前の日も同じように深夜に起こされていて、

「起きても静かにしていてね」
とお願いしたばかりだったので、私は怒りの中で起き上がった。

 

すると夫は能天気に「おはよ~」とハグしようとしてきた。
私は鬼の形相で、まだ娘が寝ているからひそひそ声で

予定の1時間も前に起こされたことに対する怒りをぶつけた。

 

夫はただ、「ごめん。申し訳ない」と謝るだけでよかったものを

なんと言い訳してきた。

 

「どうせあと1時間で起きるつもりだったんだから別にいいじゃん」

 

その1時間ぐっすり眠れたかどうかで昼間の体力が全然違うんだよ!

 

「いや違うんだって。この前リリちゃんの計算で起きたら

準備間に合わなかったじゃん。だから早く起きた方がいいと思って。」

 

だったらなんで寝る前にそれを言わないの?

 

「いや言える状況じゃなかったから。

リリちゃんこれでいい!って聞かないから」

 

そこからだんだん話がふくらんで、

なぜか夫は私の離乳食のあげ方に
問題があるとか母親との関係に原因があるとか

今の議題の睡眠を妨害された
こととは全く関係のないことまであることないこと

持ち出して私を攻撃してきた。

 

自分が睡眠を妨害されたことに対する謝罪と反省だけを

求めていた私は
思いがけず関係のないところまで逆に責めたてられ、
もう怒りを制御できなくなった。

 

最初は娘を起こさないようにひそひそ話で言い合っていたのを、
だんだん声が大きくなり、とうとう泣き叫んでいた。

 

娘はびっくりして起き上がり、狂った母を茫然と見つめていたけれど、
その姿をみても私の夫に対する怒りは収めることができなかった。

 

私は夫の肩を渾身の力をこめて叩きながら

「生きる基本を奪わないで!寝かせてください!お願いします!」

と泣き叫んでいた。

 

人の睡眠を平然と奪いながら、言い訳するにとどまらず、

今は全く関係がないのに、
体を削って必死にやっている私の子育てのやり方が

まるで間違っているかのように
責めたてるあまりに理不尽な夫の頭を、鈍器のようなもの、

でボコボコにしてしまいたくなった。

 

寝ることは、生きるために不可欠なことだ。

 

それを自分の都合だけで奪う夫は、人殺しだ。

 

怒りのあまり私の前頭葉は熱くなり、ずきずき痛かった。

胃もまっすぐ立っていられないほどキリキリ痛んだ。

さらに背中の右半分が、ピキっと固まり、

腕を動かすのも辛くなった。

 

体の痛みに耐えながら、私は魂の叫びを、

渾身の力で訴えていた。

 

「父親であるあなたが!誰よりも妻子を危険にさらしている!」

「そんな人とは一緒に暮らせない!旅行もできない!」

「あなたと一緒にいるとストレスで死んでしまう!」

 

本来はまた別の目的地へ一緒に旅を続ける予定だったのだが、
私は断固としてキャンセルした。

 

そしてその日のうちに娘と2人でまた実家へ戻ることにした。

 

夫には無理やり朝のうちに出て行ってもらい、

あなたは1人で予定通り次の目的地へ行ってくれ、と言ったけれど、

夫は行かずにホテルのロビーで待っていた。

 

朝の6時前に部屋を出た夫は、午前中いっぱいロビーで待っていた。

 

何度かLINEでやり取りしながらも私は淡々と荷物を詰め、
彼を残して娘と2人、ホテルをあとにした。

 

見送る彼は情けないような顔をして手を振り、

娘も無邪気に父親にバイバイしていた。

 

ホテルスタッフから見れば、

駐在員の夫に会いに来て帰っていく妻子の姿に見えただろう。

 

ほんとにそうだったら、よかったのに。

 

現実は、互いに「これは生き死にの問題だ!」と主張する
ただただ疲れるだけの激しい言い争いの果てに離れる、
家族の姿だった。