(この記事は過去に書いたものを転載しています)
2016年12月18日
夫は思想家の内田樹先生を尊敬していて、ご著書は全部持っているのだが、
私との結婚生活がこじれて一時的な別居状態になり、
1人フラフラさまよっていた時に
立ち寄った本屋で偶然目に留まったのがこちらの本↓だったと。
このタイミングで目に留まったこのタイトル、
これはもう神のお導きとしか思えない。
夫と再会してから私も読ませてもらったけれど
非常に非常に深く、潔く、心にストンと落ちる
さすが内田先生!という内容だった。
内田先生自身、バツイチでシングルファーザーとして
一人娘を育てあげられ、
最近若い女性と再婚されている。
まさに今「困難な結婚」を実感していた私達にとっては
全部非常にためになっておもしろかったのだけれど、
このブログの読者はパートナーが統合失調症などの精神疾患の方が
多いと思うので、配偶者が病気である場合について書かれていたことを
少しシェアしたい。
先生が質問に答えている形。
「相手が体調を崩したときや精神的に不調のときには、
どうやってサポートしたらいいですか?」
答えはまとめると、
「できるだけ優しくしてあげればいい」
精神的に不調な人はどうしても周りの人を傷つけるようなことをしがち
ですけれど、
「看病する」ということの中には「病人に傷つけられる」ということ
も含まれているので、それを勘定に入れて看病してください。
病人というのは
「わがままを言う」「文句を言う」
「生産的なことを何もしない」「みんなに迷惑をかける」
ことが「できる」ことによって治癒するわけです。
病人に対して「わがままを言うな」「何か前向きなことをしろ」と
いうようなことを言うのは看病とはいいません。
たんなる「余計なお世話」です。
相手は病気なんですよ。病気のときに聞きたいのは
「がんばらなくていいんだよ」「もう努力しなくていいんだよ」
という言葉です。
病人は生きてるだけで必死なんですから「それ以上」を求めて
励ましてはダメです。
激励というのは元気のいい人を相手にするものです。
あれ?このフレーズ、家族SSTでも聞いたな。
「病人は生きているだけで必死」
あと、「だいたいおまえは働き過ぎだから」とか「暴飲暴食するから」
なんて説教も禁物です。
なぜ病気になったのかは本人が一番よく知っているんですから。
本人が心の底から思って反省していることを「反省しろよ」と
他人が言ってはいけません。
子どものころ「そろそろ宿題やろうかな・・・・」と思っていた矢先に
母親から「あんた、いい加減宿題やりなさい!」と一喝されたりすると
「二度とするか」と思ったことありませんか。
自分で心に思っている反省点を他人に指摘されると、
「反省なんかするかバカヤロ」的な気分になってしまいます。
人間、そういうものらしい。
ただでさえ病気になって自己評価が下がっている人に
それ以上下がるようなことを言ってはいけない。
それより、病人の生き方を肯定するんです。
「働き過ぎなんだよ、おめーは」じゃなくて
「ほんとに一生懸命働いたからね。お疲れさまでした。
身体が『休みたい』って言ってるんだから、ゆっくり養生してね。」
って言えばいい。
だって、その方が早く治るんですから。
叱ったり、責めたりするのは治療のためには何の役にも立ちません。
ほんとにね。
そのとおり。
精神が不調の人を看病している家族はついつい
叱咤激励しがち。
「這えば立て立てば歩めの親心」ということわざは
赤ちゃんに対して次々の成長を願う親心を読んだものだけれど
これは病人に対しても言えるのではないか。
引きこもってソファに横たわっているだけだった精神疾患の家族が
リビングで本を読んだりするようになると
「ただ本読んでないで仕事につながる勉強でもしたらどう?」
と思ったり、
コンビニまで行けるようになったら
一緒にレストランに食事に行けたらなあ、と思ったり。
たいてい本人のペースよりずっと早い回復を求めてしまう
ものではないかな。
それが本人には負担になるんだけど。
健康な普通の人と比較するのではなくて
過去の本人と比べてみてあげたら
「すごいね。いろいろできるようになってるじゃん!」
と褒めてあげられるかも。
私の夫も、私があまりに褒めないから
よく自画自賛している。
新婚当初、1日1つのことをするのが精いっぱいだった。
頭が回ってなくて、何にも自分で決められなかった。
レストランで周囲の声に意識を集中してしまって私と
会話ができなかった。
盗聴盗撮が怖くてパソコンを開くことができなかった。
夜中テレビをつけっぱなしじゃないと、寝られなかった。
それが今
1日に5こ6こ、普通の人でもこなせないよ?というくらいのことを
こなしている。
私が付いていけないくらいサクサク自分で決めて進んでいく。
動物園、ショッピングモール、祭りなどの人混みにも行ける。
夜は無音で寝られる。
パソコンを使って仕事している‼
たった5年で、この変化。
回復ぶり。
きっと早いと思う。
すごいんだと思う。
生きているだけで必死だった、もしかしたら今だって
そういう感覚を本人は持っているかもしれないけれど
すごく努力して、ここまで来た。
たぶん、私との生活を守るために。
生き方を肯定せず、叱咤激励ばかりの悪妻であるにも関わらず
そんな私との生活を守るために、彼はここまで必死にやって
きたんだな。
すごいことだ。
これ以上、おしりを叩くのは、やめておこう。
ただただ、
ありがとう。
よかった。
君が私の旦那さんで、よかった。